アメリカ広葉樹ツキ板懇談会を大阪で初開催
4月19日(火)アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)は、「アメリカ広葉樹ツキ板懇談会」を大阪市内のホテルにて開催しました。突板のみに焦点をあてた懇談会の開催は今回が初めてでした。参加者は建築家、ゼネコン、住宅メーカー、木材・ツキ板業界の約50名の方々で、その中から9人の方々にパネリストとして参加していただきました。

アメリカ広葉樹輸出協会日本代表より懇談会の趣旨説明の後、アメリカ広葉樹輸出協会メンバーのダンザー・ベニア・アメリカスのブライアン・ゲルケン氏より「米国のアメリカ広葉樹ツキ板の現状と輸出」と題し、アメリカ広葉樹材突板の加工過程やスライス方法、また施工事情、マーケット情報などご説明いただきました。


Gerken氏
そして、日本のツキ板業界の代表として安多化粧合板(株)の安多茂一氏からは「意匠素材としての広葉樹ツキ板、欧米と日本の違い」と題して、最新のミラノサローネ国際家具見本市でのベニアのトレンドや使用方法、視点の持ち方など沢山の事例写真とともにご紹介いただきました。

ミラノサローネでの最近のトレンドは、ナチュラル素材をそのまま使用するだけではなく、それに人間の手を加えてパターンを組んだり合わせ方でデザイン性を作り出したりと、同じ素材を使用しながらも並べ方やほんの数ミリ、取り方を変えるだけで空間の雰囲気を何パターンにもすることが可能であることなど、広葉樹ツキ板の多大な可能性を見る事が出来ました。

安多氏
Gerken氏
現在空間を演出するカラートレンドは土・砂・石などのアースカラーに宝石の色を絡めるのが主流でそれにはウォルナットがマッチし、またキッチンへのツキ板の使用もブームがきているとのことでした。

続いてのフリーディスカッションの議題は、次の6項目。
1)日米でのアメリカ広葉樹ツキ板の現状 
2)日米でのアメリカ広葉樹ツキ板の厚みの違い 
3)アメリカ広葉樹ツキ板の家具・内装材としての利用方法 
4)アメリカ広葉樹ツキ板の塗装について 
5)アメリカ広葉樹資源と合法性証明 
6)アメリカ広葉樹ツキ板の将来の可能性ーについて話し合われました。

問題になる点は、日米間でのツキ板の厚さの違いで日本は0.15〜0.25mm、米国は0.5〜0.6mmが主流で、公共物件等の壁や床などの内装に化粧合板を使用する場合はその表面材としてのツキ板の厚が0.25mm以上では日本の防火基準をほぼ通らないことや、印刷技術の向上によりシート張り商品がツキ板の需要を減らしている点が挙げられました。
しかし、家具に意匠性を持たせた使い方や、個人住宅での内装などには使用可能であること、また厚突きのツキ板は無垢材までには及ばなくとも、木材の質感が十分楽しめる、さらにコストの面でも大きな面積に使うのに向いている点、光の使い方で表情が変わり無垢材とうまく併用しながら使用することで空間の質を上げる事ができる点などメリット面も提案されました。

今回の懇談会では、今後のツキ板業界としてツキ板の意匠性の役割に重点を置いて使用することでその利用の幅が大きく変わるのではとの意見が出され、ツキ板に関する認識が大きく変わるきっかけになったようでした。

セミナー後のレセプションでもツキ板を扱う会社と、それを使用する建築家や建設・住宅関係の方とのコミュニケーションをしっかりとることで、業界全体で新たな需要の拡大につなげようと各業界の方々が積極的に交流を図られているのが印象的でした。