「U.S. Architectural Mission with Life Crayon 」- Part1 (2010/05/16-22)
2010年5月16日から23日、アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)日本事務所が名古屋・三重・岐阜の建築家が中心となって設立された“ライフ・クレヨン”のメンバー12名の先生方と共にアメリカへの視察旅行を行いました。この7日間のツアー内容を詳しくこのTopicsでご紹介したいと思います。

■視察行程
5月16日(日) Buffalo空港に到着
5月17日(月) Fitzpatrick & Weller Dimension Factory (Ellicottville, NY)
Bradford Forest Inc. (Bradford, PA)
Allegheny National Forest Visit
5月18日(火) Matson Lumber Company (Brookville, PA)
Sawmill of Matson Lumber (Harrisville, PA)
Fallingwater (Mill Run, PA)
5月19日(水) Travel Pittsburgh to New York City
5月20日(木) The Glass House
Isamu Noguchi Museum
5月21日(金) Visit Bentel & Bentel Architects/Planners A.I.A. project sights
*The Modern @ MOMA
*Caf? 2 @ MOMA
*Eleven Madison Park
*Craft Steak
*MORIMOTO 
5月22日(土) ニューヨーク出発
   
【5月16日(日)】
デトロイト経由でニューヨーク州バッファローに到着。この地発祥であり、オバマ大統領も数日前にテイクアウトした有名なDuff'sという店のバッファロー・ウイングと地ビールを食し、7日間の旅をスタートしました。

【5月17日(月)】
朝7時40分、いよいよバスツアーがスタート。AHECがチャーターしたトラックのようなバスで一路ニューヨーク州エリコットにあるフィッツパトリック&ウエラー社のディメンション工場に向かいます。

バッファローのホテルから車で約45分、エリコットは緑豊かな美しい地域でアメリカ広葉樹が大変豊富なところです。フィッツパトリック&ウエラー社は1892年に設立され、もともとはハードメープルで靴型を製作する会社で従業員は100人ほど。現在は製材会社とともに加工技術を生かし、オフィス家具、キッチンキャビネット、建築部材会社などからの受注に基づいた家具部材、建築部材や階段部材、キッチンキャビネットやナイフスタンドなどの木製キッチン用品を加工販売しています。

現在、加工品と製材の生産割合は半々で、約80%が国内向け、20%が輸出されていますが、ヨーロッパや日本市場が中国に流れた約5年前は、加工品ではなく主に製材を約50%輸出していた時期もあったとのことでした。

製材は現在、数社の日本の会社にも輸出しており、同社で扱う6割がレッドメープルとハードメープル、残りの4割がソフトメープル、チェリー、アッシュです。

視察の後のミーティングでは、日本の建築家が実際に同社の製材やディメンションを直接オーダーするのは現実的には難しい面があり、また通常コンテナ単位(1コンテナに約25万m3)で販売するため量的にも多すぎると日本の建築家からの指摘があり、実際に購入する方法として、日本の木材輸入業者が同社から製材を輸入する際に、使用する材やディメンションを混載して購入し、日本の工務店に加工させる方法がいいのではないかとの提案がなされました。

今回の訪問でディメンションのクオリティーや製材の品質も確認できているので日本の木材輸入会社との価格的な面を詰め、是非とも購入の可能性を探っていただきたいと思います。また、価格の面で、アメリカではフロアー材は元が25mmのランバーで上下2mmずつ削り、標準厚19mmに仕上げてくるので日本のフロアー材の標準である15mmや12mmに削ると歩留まりが悪く加工コストがかかるため価格に跳ね返るためできれば19mmで使用していただきたいとの話がでました。 長さはランダムレングスで大体1フィート位の長さが一番多く、また曲がりにくいとのことでした。

その他アメリカでも床暖房はあるのかとの質問で、日本ほどではないが(需要は)あり主に柾目挽きにしたオークやレッドオーク材が使用されるとの回答でした。これらの樹種は径級的に柾目が取れる材であるとのことでした。

約1時間半の訪問でしたが、加工工場を隈なく見学させていただき有意義な話し合いを持てた視察でした。

次に訪問したのは、ブラッフォード・フォレスト社というペンシルベニア州にある製材会社です。同社は、ドイツ資本の会社で、自社林から切り出す樹種は、量的なボリューム順にチェリーが約40%、ハードメープルとソフトメープルが各20%、ホワイトアッシュが10%、レッドオーク、バスウッド、ポプラが各3%、ホワイトオークが1%などで、それらを製材や部材に加工し販売しています。

全生産額の約20%が輸出され、その10%が日本に、残り4%が中国、5%が韓国、1%がヨーロッパに輸出されています。ハードメープルとソフトメープルについての質問では、両者は同じカエデ科でシュガーメープルやブラックメープルがハードメープルで、辺材はVanilla色で主に床材に使用され、ソフトメープルはほぼ白色で床材ではなく、それぞれの色を塗装することでチェリーやウォルナットのように見え値段もハードメープルに比べると少し安価なため、ポルトガルやイスラエルでは塗装して家具部材に使用されているとのことでした。


各樹種の製材方法においてもハードメープル、ホワイトアッシュ、ソフトメープルなどは心材部分には芯があるため辺材の方に価値があり、チェリーやオークなどは逆に辺材は使用せず心材に価値があることや丸太の製材方法、樹は中心ほど節が多くあり、外側に近づくほどグレードが高くなり値段も高くなることなども分かりやすく絵で詳しく説明していただきました。

また、同社では、コンピューター管理によるキルンドライの行程なども見学させていただきました。乾燥期間は、樹種と厚みによって異なり、曲がりを防ぐためゆっくり時間をかけて行います。大体チェリーの1インチ材で10日、2インチ材で40日、ホワイトオークの1インチ材で32日、2インチ材で約52日かけて含水率を約8%まで落とすとのことでした。

同社では製材で出たおがくずやチップの処理方法として、約4分の1ずつボイラー燃料、製紙用、パーティクルボード用、家畜やガーデン用としてそれぞれ業者に降ろし処理しているとのことでした。木材は捨てるところがなく、また再生可能な資源であることを改めて認識することができました。

17日最後の訪問先はアレゲーニー・ナショナル・フォレストという米国農務省森林局が管理する国有林を訪れました。全米には155の国有林があり、このアレゲーニー国有林は約50万エーカーの広さでペンシルベニア州では唯一の国有林です。アメリカの森林管理(フォレストサービス)は1891年頃から行われておりこの約120年の間に森林管理の規則や法律が制定され、それを遵守しながら森林管理を行っています。

フォレストサービスの3つの部門

1. ナショナル・フォレスト・システム部門 森林の管理を行う。
2. リサーチ部門 森林のリサーチ、研究を行う。
3. ステイト&プライベート・フォレストリー部門 地元の森林所有者と州政府とのコミュニケーションを取り持つ立場として情報の提供などを行う。また、森林管理に対する法律の中でも3つの主法律があります。

1. Multiple Usage of xxx多目的利用と持続産出法・・・レクリエーションのための使用や水質保全、野生動物保護、木材製品の供給など多目的に森林を利用し保護するという法律。

2. National Environment Policy Act ・・・何か行動に移す前にどのような影響があるのかなど環境分析を行う法律。

3. National Forest Management Act・・・政府が国有林をどのように管理するかという法律。 この法律は森林局がどのように進めていくかの指針ともなる。

森林計画は15年のタイムピリオドで進めており、区画ごとに違う観察をして手を入れるところ、全くの自然のままで保つなどいろいろな方法を試しながら、私たちが欲する状態にどのような行動をとるかを決めていくとのことでした。 このようなアメリカの森林の管理方法、取り組み、政策などをじっくりと説明していただきました。

説明後に実際の森林に出向き、アメリカ広葉樹の混合樹林を視察しました。私たちが見たほんの少しのエリアでも、説明にもあったように、成熟木や若木が一緒に生息し、アメリカ広葉樹が天然更新されていることがよくわかりました。また、野生動物のシカやリス、熊などの足跡も多く発見することができ野生動物の保護の観点からもしっかりと森林管理されていることが見受けられました。

製材、乾燥工程、ディメンション加工そして実際の森林を訪れるなど大変内容の濃い一日となりました。


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