2回目の「アメリカ広葉樹バス見学会」JIA神奈川地域会と共催(10/07/28)
快晴の7月28日(水)日本建築家協会(JIA)神奈川地域会との共催で2回目の「アメリカ広葉樹バス見学会」を行いました。36名の参加者と共に一路山梨へ。

首都高速に入るまでに渋滞に巻き込まれ一時間以上の遅れで、全行程を終了できるのか心配しましたが、なんとか無事に一つ目の訪問先「ほうとう不動・河口湖東恋路店」に到着。

この建物は建築家・保坂猛氏の作品で、背後の富士山にかかる雲がふわりと降りてきたようなイメージで製作されたとのこと。

確かに今までに見たことがない不思議な建物で、暖簾の掛った入口ですら直線部分がなく、引き戸もRの引き戸で四角い窓もない。しかし中に入ってみると圧迫感のない空間が広がりを見せる。白い壁と天井の堺目がなく、空間は吊るされた照明器具も見当たらないのに十分明るい。

入口と数か所の開口部を通り抜ける爽やかな風が大変心地良く昼食にいただいた「ほうとう鍋」に暑さを癒してもらいました。

食後は保坂氏より建物の説明をいただきました。真っ白でやわらかな自由な曲面を実現するため鉄筋コンクリート(RC)シェル構造を採用し、外壁のRCシェル面は多層のレイヤーから構成されておりサンドイッチ構造にすることによって、建物の断熱性・耐久性・剛性の向上を図っているとのことでした。

またアートデレクターとのコラボレーションで建築のロゴやサインのイメージを統合し、真っ白な建物に渋い濃紺の暖簾に入った「ほうとう不動」のロゴが大変おしゃれな印象でした。


2つ目の訪問先は建築家の内藤廣氏設計の御殿場市にある和菓子で有名な老舗の「とらや工房」。この工房は吉田五十八設計の岸信介邸の大きな別荘の隣に位置します。

入口の藁葺きの山門から工房まで続くアプローチは大変長く、工房に着くまでに足を止め風に揺れる木々を見上げたり足元の花に目を奪われたりとその土地が持つ自然の力や心地良さを存分に楽しむことができる作りになっていました。

自然でありながらそこには人の手が行き届いており、きちっとした気持ち良さを感じ到達した工房自体は大変シンプルな作りでガラス、スチール、アルミ、集成材、ガルバリウム鋼板などの素材が使用され、和菓子をいただくスペースも大きな戸を開け放すと半野外のテラスになり気持ち良くお茶とお菓子をいただけます。

また厨房もガラス張りになっていて清潔な厨房で職人さんが和菓子を製作しているところも見ることができました。

そして、見学会最終訪問先は、今年創業60年を迎える海老名市の(有)戸山家具製作所。アーリーアメリカン調からナチュラル家具、木製小物など幅広く質の高い家具のほとんどをアメリカ広葉樹で製作し、現社長の戸山顕司氏は塗装のエキスパートで参加者の方々も楽しみにしていた訪問先でした。

まずは二手に分かれて工場内を見学。それぞれのグループが詳しく説明を受け、また質問を繰り返しながら木取りの段階から仕上げまでの全行程を見せて頂きました。今回とても驚いたのがユーズド家具でした。20年も30年も前に戸山家具で製作され、家族構成などの変化で使用されなくなった家具が戸山家具に戻り汚れや傷みが修復され新品同様になって販売されていました。

実際にその家具を拝見すると数十年使用しているとは思えないほどしっかりとし、デザインも全く時代遅れ感がなく社長のお話では時が経っているため逆に塗装を施してもとてもやわらかいいい色がでるとのことでした。

昨今海外から安い家具が輸入され使い捨てのように買い替えられる家具がある中、いい素材を高い技術で家具にする、そんな信頼できる家具屋さんと出会えば高くとも一度買った家具は持ち主が変わっても長く生き続ける……木の持つ素晴らしさを再認識しました。

3Fのショールームの見学のあとは戸山社長より家具製作、それぞれの樹種の特徴そして塗装に至るまで経験に裏打ちされたお話を聞くことができとても有意義な見学会となりました。