「U.S. Architectural Mission with Japanese Architects」 Part 3
5月19日(水)

ピッバーグから最終訪問地であるニューヨークに夕方到着。この日の夜は皆それぞれ自由時間を楽しみました。


5月20日(木)

グラスハウス

彫刻棟

絵画棟


グラスハウス・オフィス

Da Monsta
朝グランド・セントラル・ステーションから、コネチカット州New Canaanまで電車で約1時間、フィリップ・ジョンソンの「グラスハウス」の見学に向かいました。

47エーカーに渡る広大な敷地にはメインの鉄骨の枠とガラスでできたシースルーの建物「グラスハウス」を中心に、彫刻だけを展示する棟、絵画を収納する棟など合計13棟があり、歴史に名を残す多くの芸術家が集った空間は大変贅沢でアートなものでした。 今回は写真撮影も許される2時間のモダン・フレンドツアーに参加し、グラスハウスの室内はもちろんのことアンディー・ウォーホールなど、フィリップ・ジョンソンが収集した絵画、写真、彫刻やそれを展示している各棟のバックヤードまで隅々を見学することができました。


Library/Study
メインのグラスハウスは木々や低い壁、建物の配置により敷地に入るエントランスからは直接見えないように工夫されており、松ぼっくりの形や青々と茂る芝生に至るまでが一つの風景、また芸術になるようしっかりと選び抜かれているのに、それがあたかももともとそこに生息していたかのように配置されていることに大変驚き、フィリップ・ジョンソンの芸術に対するこだわりと裕福さを感じました。


イサムノグチミュージアム
その後NYCに戻り、ロングアイランドにある「イサム・ノグチ・ミュージアム」へ。イーストリバーを渡った周りには何もないような場所にありますがミュージアムの中に一歩足を踏み入れると、とても静かで心癒される空間にどっしりと石の彫刻が展示されていました。

特に中庭には彫刻と共に緑豊かな木々が生い茂りニューヨークにいることを忘れてしまうようなゆったりとした心休まる空間でした。作品はどれも大変素晴らしく、大小様々な彫刻が数多く展示され、ニューヨークにはたくさんのミュージアムがありますが一日ゆっくりと過ごしたくなる時を感じることのできる数少ない美術館のように思いました。


5月21日(金)

この日は午後一番からNYCを拠点に世界で活躍されている建築家Bentel & Bentelのキャロル・ベンテル氏の案内でBentel&Bentel社がNYCで手掛けたプロジェクト4軒を見学しました。

ベンテル&ベンテルは1957年に設立、優れたコンテンポラリー・デザインで好評を博し、一貫して力強くモダンで創造的な設計を追及する建築デザイン事務所で、その土地の歴史や地域のスタイル、景観、都市背景など現場から得るインスピレーションを設計に取り入れ、前例のないデザインを再定義して“良いデザインは実用的かつ美的な資質の両方を明示する”という信念を実例にて立証し、国内外で多くの賞を受賞している会社です。

その信念は訪問したプロジェクトを見学したことで心から納得させられました。まずセントラルパークに程近いRestaurant “Rouge Tomate”へ。NYCセレブリティーの利用も多いという店内は明るく洗練された雰囲気でまさにNYという感じ。フロアーや階段などの内装にはふんだんにアメリカ広葉樹が使用されており大人カジュアルな雰囲気の中に高級感が感じられるデザイン。


“Cafe@MoMA”を見学
私達もこちらでベンテル氏とランチをいただきその後、イエローキャブに分乗してニューヨーク近代美術館の中にある“Cafe@MoMA”を見学。ここもベンテル氏が手掛けたプロジェクトで、店内はリッカーボトルが全面に並ぶ印象的なバーセクション、ゆったりとくつろげるソファーセクション、そしてきっちり座って食事ができるダイニングセクションと一軒のレストランの中でもその日の気分や用途で色々な使い方ができる表情豊かなレストランで、近代美術館に相応しいハイセンスな雰囲気でした。

たくさんのニューヨーカーが食事をするテーブルの間をかき分けそれぞれのセクションからキッチン、別室の宴会場まで隅々を見学。大きな宴会場を仕切る自動開閉式の壁までベンテル氏のアイデアで製作されており全てにおいてベンテル氏がイメージするものが形になっていることに驚きました。

その後2階の“Cafe2”へ。こちらは1階のレストランとは全く雰囲気の異なるカジュアルなカフェでイタリアの大衆食堂的な要素を取り入れた現代的なデザイン。アートを楽しむ世界各国の人々が簡単にオーダーできるような表示の仕方を工夫しており、西洋の僧侶が集まり食事をする時の長いテーブルからインスピレーションを得て造られたシンプルな食卓は一つのコミュニティーを思わせ、美術館賞した人々がその興奮をこの場所で落ち着かせまた戻るという流れを汲んだデザインでした。

その後11th streetにある“Eleven Madison Park”という気品溢れるレストランを見学。もともとは銀行だった建物の一階にあるこのレストランは、20フィートの大きな窓から隣接するマディソン・パークの緑豊かな公園をみることができ、明るく天井も高くて開放感があります。

店内は4枚のアメリカ広葉樹の葉がモチーフとして使用されており、真っ白なテーブルクロス、黒革の椅子、鉄と木をふんだんにデザインに取り入れた内装はどれもきちっとしていて、少し気取って気持ち良く食事ができる空間が広がっていました。

最終見学地はチェルシー地区にあるCraft Steakというレストラン。この辺りはもともとミート・パッキング・エリアと呼ばれた食肉加工を中心とする工場及び倉庫街でしたが現在はギャラリーやレストランなどが多く集まるお洒落なスポットで、最近ではHeight Lineというかつての高架貨物鉄道の路線跡を公園にした新しいスポットがあります。


ステーキレストラン
チェルシー・マーケットの向いにあるCraft Steakは大変規模の大きなレストランで、もともとあった鉄骨を活かし、ベンテル氏がデザインしたストライプのカーペット、バーエリアとダイニングエリアを区切るガラスの大きなワインセーラー、まっすぐ天井から延びるライトなど大きな空間を生かしたダイナミックかつ洗練されたレストランでした。

今回拝見させていただいたレストランはどれも同じ印象を持つものは一つもなく、ベンテル&ベンテル社が考える”その土地の歴史や地域性からインスピレーションを受けデザインに取り入れる。良いデザインは実用的かつ美的な資質の両方を明示する”というポリシーを見事に表現されていました。 どれもが都会的で洗練されていましたが、どこか温かみがあり心地良さを与える。

今回案内してくださったキャロル・ベンテル氏、最後のMORIMOTOでの食事会に出席していただいたポール・ベンテル氏の知的で周りを気遣う優しいお人柄がそれぞれの作品の雰囲気に溢れ出ているように感じました。

これで1週間に渡るアメリカ広葉樹輸出協会・日本事務所が初めて開催したUS Architectural Missionは終了しました。アメリカ東部地域をめぐった視察はアメリカ広葉樹の製材工場や木取り工場、アメリカ広葉樹林の管理現場、歴史的建築、アート、そして世界の中心であるニューヨークシティーを目一杯感じる充実した旅行となりました。