「アメリカ広葉樹建築家セミナー&レセプション in 山梨」 2010/04
2010年4月15日(木)、アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)は山梨・小淵沢では初めて「アメリカ広葉樹建築家セミナー」を(社)日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部住宅部会との共催で開催しました。

米国大使館・アメリカ農産物貿易事務所(ATO)所長のコンロン氏のオープニングスピーチで今春山梨県と米国・アイオワ州が姉妹州50周年記念を祝う「山梨プロジェクト」を米国大使館農務部が展開しており、米国農務省のコーポレーターとして活動するアメリカ広葉樹輸出協会がそのプロジェクトの一環として今回のセミナーを山梨県で開催する運びになったことなどが述べられました。

そして講演では、アメリカ広葉樹輸出協会副会長ジョン・ブラウンより持続可能なアメリカ広葉樹林から輸出される木材製品は日本のグリーン購入法のガイドラインに則した合法性が保証されているのは言うまでもなく、木材は再生可能で成長木が酸素を空気中に放出する、また他の建築素材と比較して加工や輸送時にかかるエネルギーも少ないという面でも環境に優しい天然素材であること、米国が未来に繋げる為どのような森林管理を行っているかなどが説明されました。

次に日本側より(有)児野建築研究所の建築家・児野孝治氏よりの講演「アメリカ広葉樹との出会い」では、幼い頃の農村地帯での生活が原風景にあり現在の環境に優しい建築に取り組む姿勢に繋がっていると言及。現在アメリカ広葉樹を保育園、住宅、商業施設などに多用されており、その経験に基づき同氏が考える環境建築をお話いただきました。もとはスギやヒノキを多く使用していたが、他に違う表現方法はないかと探していたところアメリカ広葉樹に出会い、アメリカ広葉樹はいつ、どこで、だれが、どれだけ切ったかがはっきり判る材であり、安価な値段であるからと出所がはっきりしていない材は買わないようにする、そういう点から森林を守る姿勢を持つことも大切だとお話されました。その家や家族が持つ雰囲気や気配を理解して取り込む設計を大切にされており、内部空間のエネルギーが形になるというような考え、素材のみならず“温かさ”を感じる空間作りを心がけていらっしゃるとのことでした。

配布資料に掲載した作品からもキャラクターマークがあるホワイトアッシュを多用され、単価的にも比較的使い安いその内装材を使用することで空間に動きが出でるとのことでした。

休憩の後、米国より招聘しましたツリオ・イングレージ氏より「木造建築の環境的利点」と題したプレゼンテーションがありました。ウエントワース工科大学、オクラホマ大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)で学び、著名な建築家ウォーレン・カリスター、ウォルター・グロピウス、パオロ・ソレリの下で建築デザイナーを務めた同氏は、現在マサチューセッツ州アムハースト市に拠点を置き活動する建築家で太陽熱利用建築、サスティナブルコミュニティなど周りの環境と調和し、できる限り建物や素材の再利用をし、熱や光、風など自然の力を利用してその建物自体が必要なエネルギーを作り出せる環境科学でもあるという考え、動物や植物から学ぶ形態学やコットンや毒性のない素材を取り入れた建物など12の環境建築原則をスケッチや写真でご紹介いただきました。

パネルディスカッションでは、講演された3名に加えパネリストとしてJIA長野の片倉隆幸氏とJIA山梨の網野隆明氏にご参加いただき、1)日米の建築家の環境建築への取り組み 2)日米の建築家の木質内装材利用に対する考え方 3)日本の建築家に対するアメリカ広葉樹を含む木材製品の情報提供の方法、さらには流通過程についての問題点なども掘り下げて議論されました。

パネリストの意見は日米問わず木材は他の建築資材に比べて、より良い材だということは皆さんが合意されており、問題はその素材がどこから来ているのかで、地産地消が輸送燃料などの面からみても一番望ましいが針葉樹は主に構造材、広葉樹は内装や家具などそれぞれの用途に合わせて両方の材をうまく組み合わせて使用するのが良い解決法ではないかとの意見がでました。

また針葉樹を床材に使用するとササクレなどが出ることがあり保育所など素足で使用する所では危険である場合があるが、広葉樹の床材ではほとんどその心配が無い。ホワイトアッシュの20mmの床材では反りが出にくいよう両面塗装を施し、直接張って床暖房として空冷のヒートポンプを使用しても施工後3年経った現在でも反りなどの問題もなく施主に喜ばれているとの報告がある一方、他の建築素材と価格的に競合できないと良い素材だと判っていても使用拡大がなかなか進まないのではとの意見が聞かれました。

アメリカ広葉樹輸出協会は今後も多くの都道府県でこのようなセミナーを継続的に開催し、参加者の方のご意見を聞きながら、アメリカ広葉樹や木材の魅力、活用方法などを日本の建築家やデザイナーの方々にお伝えしていきたいと考えております。

今回のセミナーで配布しました児野氏とイングレージ氏の講演資料、またアメリカ広葉樹の資料は無料で御提供しておりますので、弊協会のホームページから「お問い合わせ・資料請求」のページよりお申込ください。